コンタクトの度数、強くすれば見える?上げる前に知ってほしいこと|視能訓練士夫婦が解説

コンタクトレンズを指先にのせ、度数を上げようか迷っている女性のイラスト コンタクトレンズの疑問

コンタクトをしていて、なんだか見えにくい。「度数が合わなくなってきたのかな。度数を変えれば、また見えるようになるかな」——そう思うこと、ありますよね。その気持ちは、とてもよくわかります。

だから先に、いちばん大事なことをお伝えします。見えにくいと感じても、度数を上げる前に確かめてほしいことがあります。そして、自己判断で度数を変える(強いレンズに替える)のは、できれば避けてください。度数は「強いほどよく見える」という単純なものではないからです。

書いているのは、眼科で検査を担当している視能訓練士(CO)の夫婦です。コンタクトの度数の相談は、検査室でもよくお受けします。この記事では、度数を上げる前に知っておきたいことを、順番に整理していきます。

この記事は、やわらかいソフトコンタクト(SCL)を使っている方に向けて書いています。ハードコンタクト(HCL)は度数の仕組みが少し違うので、別の記事で扱います。


「見えにくい=度数が弱い」とは限らない

まず知っておいてほしいのは、コンタクトの見えにくさの原因は、度数だけではないということです。

見えにくい・かすむ・ぼやける。こうした見え方の不快感の裏には、度数以外の原因がかくれていることがよくあります。たとえば、次のようなものです。

  • レンズの乾燥(目の表面のうるおい不足)
  • レンズについた汚れ・タンパク質のよごれ
  • レンズの傷みや変形(交換時期を過ぎたレンズ)
  • レンズが目の上でずれている
  • そもそものフィッティング(目とレンズの相性)が合っていない

また、1day(使い捨て)か、2週間交換かといったレンズのタイプによっても、起こりやすい原因は変わってきます。

実際、「見えにくい」と来られた方をよく調べてみると、度数ではなく、レンズの汚れや乾き、傷みのほうが原因だった——ということも少なくありません。

さらに、原因はレンズだけとも限りません。ドライアイや、パソコン・スマホを長く見続けることによる疲れ目(VDT)など、目そのものの状態が見えにくさにつながることもあります。(このあたりは、また別の記事でくわしくお話しします。)

だからこそ、まずはレンズやケアの状態を見直してみる価値があります。新しいレンズに替えたら、あっさり解決することもあります。


度数を上げれば「よく見える」ようになる?

結論からいうと、近視の場合、度数は上げれば上げるほどよく見える、というものではありません。上げすぎた状態を「過矯正(かきょうせい)」といいます。

コンタクトやメガネの度数を専門的に決めるときも、「過矯正にならないように選ぶ」ことが基本の手順とされています。同じくらいよく見える範囲のなかで、いちばん弱い度数が、目にとってやさしい基準になります。

それより強くすると(過矯正)、じつは同じ視力でも、見え方が一段くっきりしたように感じることがあります。ただ、それはピントを合わせる目の筋肉(調節)が働いているためで、その分、目は休まりにくくなります。はっきり見えている感じがしても、目は裏でがんばり続けている、というわけです。

私たちが検査でお会いするなかでも、目の疲れや見えにくさを自覚されている方で、度数が強すぎるケースがあります。「よく見えるように」と強くしたはずが、かえって目の負担になっている——そういうことも起こりえます。

また、ピントを合わせる力(調節力)は年齢とともに少しずつ下がっていき、40歳代ごろから、見えにくさや目の疲れ(眼精疲労)を感じ始める方もいます。強すぎる度数は、この調節の負担をさらに増やしてしまうことがあります。


「度数を上げると近視が進む・目が悪くなる」って本当?

「度数を上げると、近視が進むって聞いた」「強いメガネやコンタクトは、目を悪くするんでしょ?」——この噂、気になって検索される方が多いテーマです。

まず、大事な前提から。近視の進行は、主に体が成長する子どもの時期に起こります。大人になると、病気などの特別な事情がなければ、近視が大きく進んでいくことは、それほど多くありません。

そのうえで研究の話をすると、「きちんと合わせた度数で近視が進む」という心配は、さまざまな研究で否定されています。(子どもの近視では、逆に弱すぎる度数のほうが、かえって進みを早めたという報告もあります〔Chung ら, 2002 ほか〕。)

近視が進む・進まないは、主に成長期の子どもの話です。大人のコンタクトで「度数を上げると近視が進む」と、過度に心配する必要は、基本的にありません。

では、大人はなにを基準に度数を選べばよいのでしょう。答えは、「近視が進むかどうか」より、その人の用途・目的に合った“ちょうどよい度数”です。パソコン中心の一日なのか、車の運転が多いのか——目的によって、ちょうどよい度数は変わります。過矯正で目を疲れさせないことが大切で、場面によっては少し弱めのほうが快適なこともあります。


眼鏡の度数とコンタクトの度数は、同じではない

ここで、意外と知られていない大事な話をします。眼鏡の度数と、コンタクトの度数は、同じ数字ではありません。

「メガネがマイナス5.00だから、コンタクトも5.00でいいはず」——そう思ってレンズを選ぶと、実は合わないことがあります。

理由は、レンズと目の距離です。眼鏡のレンズは目から1cm(約12mm)ほど離れていますが、コンタクトは黒目に直接のります。この距離の差で、必要な度数が変わるのです。近視の場合、コンタクトのほうが眼鏡より少し弱い(マイナスが小さい)度数になります。

そして、ここがいちばん覚えておいてほしいところです。度数が強い人ほど、眼鏡とコンタクトの差は大きく開きます。

目安を見てみましょう(ソフトコンタクトの場合)。

眼鏡の度数コンタクトの度数(目安)
−5.00約 −4.75約 0.25
−8.00約 −7.25〜−7.50約 0.50〜0.75
−10.00約 −9.00約 1.00
−12.00約 −10.50約 1.50

弱い度数のうちは差はわずかですが、強くなるほど差は大きくなります。つまり、もともと度数が強い方ほど、眼鏡の数字のまま同じ強さのコンタクトを買うと、大きく過矯正になってしまうおそれがあるのです。

インターネットには「眼鏡→コンタクト換算表」がいくつもありますが、サイトによって数字がまちまちで、なかには計算の式と合っていない表もあります。表を見て自分で換算する、というやり方は当てにできません。度数の変換は、検査のなかで確かめるものだと考えてください。


危ないのは「ネットで買うこと」より「自分で度数を変えること」

度数を自分の判断で変えるのは避けてほしい——その理由を整理します。

まず前提として、コンタクトは「高度管理医療機器(クラスⅢ)」に分類されています。正しく使い、管理しないと目に影響が出るおそれがある、として国がていねいに扱う区分の医療機器です。市販のサプリや目薬とは、位置づけが違います。

ここで、誤解のないようにお伝えしたいことがあります。ネットでコンタクトを買うこと自体が、悪いわけではありません。眼科できちんと診察を受け、度数やレンズの種類を決めてもらったうえで購入するなら、買う場所が眼科の提携店かネットかは、大きな違いではありません。決まったレンズを少しでも安いところで買いたい、という気持ちは自然なものです。

気をつけたいのは、眼科の診察を受けずに、自分の判断で度数を変えてしまうことのほうです。先ほどの通り、眼鏡の数字はそのまま使えませんし、度数が強い方ほど、自己換算は大きな過矯正のもとになります。

実際、厚生労働省も、「検査不要」「処方箋不要」などと、眼科の受診がいらないかのように思わせる売り方を、不適切なものとして販売業者に注意しています。裏を返せば、気をつけるべきは“受診を飛ばすこと”であって、購入する場所そのものではない、ということです。

とくに、はじめてコンタクトを使うとき(初装)は大切です。眼科や提携店では、目とレンズの形状が合っているか(フィッティング)やつけ心地を確かめながらレンズを選び、正しいつけ外し・ケアの指導もしてくれます。この最初のステップは、ネットで買うだけでは受けられません。

そして、レンズが決まったあとも、定期的な診察を受けることと、決められた装用時間を守ることは続けてください。見えているつもりでも、目に負担がかかっていたり、レンズが合わなくなっていたりすることがあります。

まとめると——買う場所そのものより、「きちんと診てもらったうえで使うこと」が大事です。「見えにくいから、とりあえず強いのを」と自分で度数を変えるのは、見え方だけでなく、目の健康リスクの見落としにつながります。


正しい度数は、どうやって決める?

では、ちょうどよい度数はどう決めるのでしょうか。

眼科やコンタクトの処方の検査では、検眼レンズ(試しに入れて見え方を確かめるレンズ)を使いながら、「よく見えること」と「目の負担が少ないこと」のバランスをとって度数を決めます。ただ一番強くよく見える度数を選ぶのではなく、そこから目にやさしいところを探していくのです。

そして、度数と同じくらい大切なのが、定期的な検査です。検査では度数だけでなく、黒目やまぶたの状態、レンズの汚れや傷みまで見ています。見えているつもりでも、目には負担がかかっていることがあります。

見えにくいと感じたら、度数を上げる前に、まず眼科・コンタクト処方の検査で相談してください。原因が度数以外にあることも、今の度数が強すぎることもあります。


まとめ

コンタクトの度数について、大事なところを振り返ります。

  • ① 見えにくい=度数が弱い、とは限らない。乾燥や汚れ、レンズの傷みが原因のことも多い。
  • ② 度数は強いほどよいわけではない。過矯正(強すぎ)は、同じ視力でも調節が働いて目が疲れやすい。
  • ③ 「度数を上げると近視が進む」は、主に成長期の子どもの話。大人ではあまり進まず、過度な心配はいらない。
  • ④ 眼鏡とコンタクトの度数は同じではない。度数が強い人ほど差が大きく開き、眼鏡の数字での自己換算は当てにできない。
  • ⑤ 大人は「用途・目的に合った、ちょうどよい度数」を、見え方と目の負担のバランスで、検査のなかで決める。

見えにくさを感じたとき、「強くすれば解決する」と考えたくなる気持ちは自然なものです。でも、その一歩手前で、まず眼科で相談する——それが、見え方も目の健康も守ることにつながります。度数のことで気になることがあれば、「今の度数が合っているか見てください」と聞いてみてください。私たち視能訓練士も、あなたの目を一緒に守るためにいます。


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参考文献・情報源

  • Chung K, et al. 「Undercorrection of myopia enhances rather than inhibits myopia progression.」Vision Research, 2002.(子どもの近視で、低矯正がかえって近視進行を早めたとする報告)
  • 眼鏡・コンタクトの度数換算に関する一般的な計算式(角膜頂点間距離12mm換算:CL度数=眼鏡度数÷(1−0.012×眼鏡度数))、および各メーカー・眼科の一般公開情報
  • コンタクトレンズが「高度管理医療機器(クラスⅢ)」に分類される点についての公的情報
  • コンタクトレンズのネット購入・眼科受診に関する公的な考え方(日本眼科医会、日本コンタクトレンズ協会、厚生労働省の注意喚起等)
  • 視能訓練士夫婦が検査室で日常的に見る一般的傾向(特定の患者エピソードではありません)

※この記事は一般的な情報提供を目的としています。見え方や目の状態には個人差があります。気になる症状があるときは、眼科でご相談ください。

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